GVHD(移植片対宿主病)は残酷な後遺症だ。白血病の治療のために骨髄移植を受けたことで発症。闘病は15年になるはずだ。急性GVHDから慢性GVHDに移行。昨年冬の段階では、もう自分で車椅子を動かせず、週に一度家族が車椅子を押して外出。ステロイド剤の影響で思いっきりムーンフェイスだ。肌が荒れ、突っ張ってるのが分かる。
そんな彼の顔写真を見たのは新聞のコラムだった。私自身も安全に明日が来るとは言えない。思いきって新聞社に連絡。紆余曲折を経て電話が繋がった。声はほぼ変わらず。口の中はびっしりと口内炎。一体何を食べて生きてるんだろう。話す内容はともかく、陽気に自己開示し続ける姿は大昔のまま。しかしもう、他家の旦那さんになっている彼だ。
私は彼の11歳から20歳までの姿を知っている。よく知っている。いわゆる彼氏だった男だ。何をさせてもソツなつこなす、容姿にも恵まれた同級生。
白血病が分かったのは、44歳になる年始の発熱。なかなか熱が下がらんので年明けに通院。そこで白血病だと指摘を受けた。そこからは再発が日々目の前にある生活。同年8月に再発。なんとかドナーが見つかって移植を受けたものの、今度はGVHDの長期化。手足のこわばりがじわじわと進行。手に力が入らずコップを落とすことが増えて分かったそうだ。日々ボタンを止められない。その度に自分の身体の変化に直面させられて悲しい。
次は55歳で歯肉ガンを発症。歯を5本抜いて歯肉を取り除いた。どこの歯かまでは聞けなかったが、とろみのある食事だってことなので、奥歯なんだろう。
もう他の家の旦那さんになってる元彼に言うのもナンだけど、すれちがいの自然消滅だった交際相手には悪い思い出がないだけに、今でもどこかしら自分の延長のような気持ちがする。そして、本当にこんなことを言っちゃいけないんだけど、あのまま私と結婚しなくてよかったなとも思う。私、いまリハビリ病院にいるんだから。そういう体調の夫と暮らしてれば40代で共倒れになっていただろう。
健康な女性と結婚していて本当によかった。
そしてせめて、親でも知らない彼のことも含め、私の記憶の中では元気な彼を留めておきたい。私が忘れなければ、元気な彼はずっとずっとこの世に残る。元カノができるのはこれだけだ。
元カノの心が塞ぐくらいだから、家族の心痛はいかばかりか。連絡が途絶えて1年。怖くてLINEを繋ぐことができない。
ステロイド剤を大量に使っても症状が悪化する一方。じわじわと健康を削り、治療もできず、静かに死を待つ。これが強度のGVHD。しかもガンの再発とともに薄氷を踏む思いで暮らしてるんだろう。生きている間に、小さな幸せをできるだけ沢山拾っておいて欲しい。
今日のリハビリソングは、13歳の誕生日にくれたレコードの歌。「どの子にもひとつの命が光ってる。呼び掛けよう名前を。素晴らしい名前を」と歌う命の賛歌。裏面は英語。この歌の英語を聞き取りたくて、文法を知りたくて、毎日毎日聞き続けた。私の英語力の礎を作ったのは彼だ。
今日はその歌がリハビリソング。ちょうどこの日、私はレコードを受け取った。名前を呼ぶから、命がまだ光ってて欲しい。
死ぬなよ。一緒に還暦を越えようぜ。
小学生から大学生までの共に過ごした元カノからの切なる願いだよ。
生きろ。君はもう59歳になっている。あと1年弱だ。どうか還暦を越えてくれ。
<本日の記録>
リハビリ内容
PT
寝返り練習は90度で左右回れるようになっていた。ベッドに手をついて骨盤を前後左右に動かす。昨日同様、ベッドから降りる練習。そこから正座、は太ももの張りがつよくてお尻がかかとにギリつかないため、枕を2個挟んで正座。それでも太もも前側に強い張りがある。ベッドから降りるときに右足がひっかからなくなった。ベッドに戻るときは背後から引っ張ってもらう必要がまだある。四つん這いで往復。バーの左側を握って何度も往復。敢えて弱い左側を軸足にして1本杖の練習。片足立ちは左右の足とも3秒台で倒れる。最低30秒できないと安全歩行は厳しいとのこと。足を縦に並べて手を離すのは30秒程度可能。歩行器ではじめて外に出た。病院前の緩いスロープを含む移動。まだフリージアが咲いてる時期なのね。
OT
固い筋肉をほぐす(骨の中心が痛い)ホットパックの後揉みほぐし。両足とも太もも内側を揉まれると激しい筋肉痛レベルで痛む。2本杖でリハビリ室をテンポよく歩行。座って足あげし、上から押す力に抵抗して押し返すチェック。両足の上がり方の差はたった5cmくらいまで縮小。押し返す力の左右差も。左は、5点満点評価で左3.5 右は4。
自主トレ
歩行器(アルコー)1時間。入浴後は体力を持っていかれるので欲張らず。堂々と杖なしで颯爽と歩いてるにーさん、完璧に歩けてるのにまだストイックに続けている。見習いたい。看護師見守りの2本杖歩行は、直前に寝入ってたのでふらつきあり。そうでなければ院内2周は可能だったとみている。
体調変化など
入浴日。出入り口の一番滑る20センチのタイルを1歩で乗り越えた。着替えで介助されたのは臀部洗いと左靴下あげのみ。ズボンは足を組むことでクリア。自室カーテン内で、全く何もなく歩けてることに気づく。ただコルセットをつけてないので、やはり身体が前のめり。両手の湿疹に軟膏処方。
遠くに行くときは歩行器。そうでなければ2本杖も視野に入ってきた。片足立ち可能な時間は、私の年齢なら1分は必要とのこと。そこがクリアできれば、1本杖に戻せるかも。
太ももに布団がかかってるかどうかがわからない。今朝はカーテンを巻き込んで寝てた。太ももの感覚異常は結構しつこい。シャワーが当たると、他の部位より熱く感じる。耐えられないほどの温度ではない。
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